平成17年 3月 「花粉症とスギ」
今年もまた花粉の季節がやってきた。花粉の量が昨年の数十倍というニュースを耳にしても、幸い今のところ自分には憂うつな気分になることもない。それでも、30代を過ぎ、40代50台になってから花粉症になってしまう人もいると聞くので安心はできない。花粉症の人たちにとってみれば、その主たる原因であるスギは見たくもない存在であるに違いない。なくなってしまえばよいと考えている人たちもいるのかもしれない。しかし、スギの存在自体が悪なのだろうか。いやそうではない。
戦後から始まった植林によるスギはありあまるほどに日本の山に育っている。しかし、使われる量があまりにも少ない。身近にある山の木よりも、船で運ばれてきた外国の木材の方が安いという理由で流通しない。流通しないので、人件費のかかる人の手によるスギ林の伐採や手入れが行き届かなくなり、スギは悲鳴を上げている。太陽光の届かなくなった密集した林の中では個々スギが生長していくのが難しくなる。もっといえば存在自体が危ぶまれる。そうなると自然の摂理として次のような現象がおこる。
弱肉強食の動植物の世界では、子孫を必ず残していくために、存在自体が危ういもの、つまり食物連鎖のピラミッドの下部にいる生物ほど、卵や種子を多量に生み出す。そのうちの数パーセントでも生き残れば、その種の絶滅は免れるからである。それと似たような現象がスギの世界におこっている。生存していくため、スギの植物としての本能がこれまで以上の多量の花粉を発生させている。
富山県林業技術センターというところで、無花粉スギを開発したという発表があった。10数年前、たまたま富山市内の神社で無花粉スギが発見され、その種子をもとに交配を重ね、やっと品種登録の出願にまでこぎ着けたそうである。しかしながら、親となる母樹が1本しかないため、大量に普及させるのはむずかしく、とりあえず平成23年から年間500本程度の生産体制を整え,まずは公園などに緑化用として普及していく予定とのことである。朗報には間違いないが、まだまだ先の長い話である。そうこうしているうちに、花粉症の特効薬が開発されるのではなかろうかと思ったりする。
花粉症発症の原因は車の排気ガスとの複合作用であるということも言われているのだから、現状ではスギ花粉だけがスケープゴートとなっていると思われるふしもある。花粉のない種や特効薬の開発を期待するよりも、もっと根本的な解決方法を模索してみてはどうだろうか。ようは簡単なことである。外材よりも、日本で育ったスギをもっと活用することだ。もっとも大量に使う分野といえば、やはり木造住宅であろう。住宅メーカーのようにきれいに見える集成材の柱を使うのではなく、節のあるスギの柱をもっと積極的に使う必要がある。昔から節のないものが高級とされてきたが、節のある材にも価値を見出すことで、スギ材の流通を活性化させることができる。流通が活発になれば、山にお金が還元されるようになり、良好なスギ林が保たれ、花粉の発生量が抑えられる。
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